Susanne
Conradi Geigenbau Meister
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Augsburg
1999 \1,050,000-.
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Susanne
Conradi 女性の製作家です。ラベルにも、Meister(マイスター)ではなく、Meisterin(マイステリン)としてあります。 その彼女の作ったこの楽器は、(これは女性的なものといって良いでしょうか、)非常に繊細でいて魅力的な個性と感性が感じられます。 「古いマイスター達の手による楽器は、新作を作る上での多くの示唆に富んでいます。でも単に複製を作るよりも、古い楽器製作の伝統を踏まえた上での独自のデザインを常に心がけています。」 という彼女の言葉通り、この楽器もインスピレーションにあふれた作品です。 私が外観で一番気に入っているのは、スクロールの背面です(このページの一番上の画像)。(弦楽器ディーラーのヤラシイ目から見た場合ですが・・)たっぷりとした下部から小ぶりに固く巻かれたスクロールの上部への曲線はとてもキュートです。前面もなかなかニクイ作りをしています。糸巻きの弦の巻かれている部分の空間(「糸倉」「ペグボックス」なんて言われる部分)の上部が丸く丁寧に装飾的作られているのにお気づき頂けますでしょうか? 裏板のボタン(ネックの付け根)部分のパーフリングは内側で結ばれ、その上に[C]の中に[S]が描かれた、[C]onradi,[S]usanne 彼女のマークが焼き付けられています。このパーフリングは装飾的な目的の他に、力の加わりやすいボタン部の強度を上げる意味があります。 胴体の隆起は高めでありながら、ミドルバウツ(胴体中央のくびれ)は細く引き締まっており、楽器全体の印象として小さく感じるかもしれませんが、弦長その他の寸法は、もちろん伝統的なフルサイズの寸法通りです。 楽器を観察しただけでもこれほど、わくわくする彼女の楽器は音響面で高く評価されています。彼女の受賞歴にある、分数楽器の音響部門入賞は、「限られた大きさの木の箱」をいかにして鳴らすかという大命題を熟知している、ということの現われだと思います。実際弾いてみれば分かってもらえると思いますが、私も、夢中になって弾きこんでしまった後に「(前述の)外観上の美しさ・個性は、この音からこそ生まれたものなのだなぁ」と、言わば逆説的な感慨を覚えました。 ちなみに、彼女の楽器はバイエルン国立オペラ(Bayerische Staatsoper)・ミュンヘンフィル(Munchiner Phirhermoniker)の楽団員にも愛用されています。 |